こんにちは。愛知県岡崎市の地主研究家 さくらです。
今回は、”水道料金の地域格差”について、お話したいと思います。2018年12月、国会において水道法改正案が成立し、2019年10月から施行することになっています。その結果、水道事業は民間企業も参入可能になりますが、ここで皆さんに質問です。今後、水道料金は変わらないと思いますか。
タイトルにも書きましたが、僕は「令和は、水道料金の地域格差が拡大する時代」になると思います。
ちなみに、今は全国一律の水道料金になっているんだよね?
違いますよ。今でも、地方自治体によって、金額はバラバラです。
既に、水道料金は地方自治体で違う
ご存じの方もいると思いますが、既に、水道料金は地方自治体で違っています。例えば、水道料金(口径20mmで20m3の月額)で考えた場合、一番高い地方自治体は夕張市の6,852円になります。それに対し、一番安い地方自治体は赤穂市の961円になります。その差、約7倍です。ここまで、極端ではありませんが、同規模の都市間でも、1.5倍~2.0倍程度の料金差はあるようです。
地方自治体で水道料金が違う理由
水道事業は各自治体で運用しており、料金も地方議会を経て条例で決められています。水道料金の基準は、水源からの距離、水質、水道の布設時期、人口密度により変わってきます。水源の水質や水量、地形に恵まれていれば、運営コストは少なくて済みますし、逆のケースでは高くなります。
今後、地方自治体で水道料金の格差が広がる理由
既に、各自治体で水道料金は違っていますが、今後、さらに広がる理由は2つ考えられます。
1. 老朽化した水道管を取り換えるため
水道管が整備されて40年以上経過したことで、水道管が錆びたり、地震で破裂する恐れがあるために、補修工事が必要になっています。老朽化した水道管を新しくするには、1km1億円以上の費用がかかるといい、莫大な工事費用をまかなうために、水道料金の値上げが考えられます。
2. 急激な人口減少
日本の人口は2008年の1億2,800万人をピークに減少し始め、2063年には総人口が9,000万人を下回ると予測されています。
人口や水の利用量が減少すれば水道料金の収入は見込めず、地方自治体の財政が一段と厳しくなってきます。結果、地方自治体は事業継続するために、水道料金の値上げが考えられます。
水道民営化による影響
政府の狙いとは
水道事業が赤字になっている地方自治体は多数あり、今後も、①水道管の老朽化や②人口減少による収益悪化が予想されます。そこで、政府は「地方自治体よりも民間企業のほうがコスト削減のノウハウがあり、水道事業の赤字体質から脱却できる」と考え、水道民営化を推し進めました。
郵政事業の民営化における事例
一足早く、郵政事業も民営化されたことを覚えていますか。政府は、「民営化すれば、郵便局はもっと便利になる」と言っていました。しかし、”集配郵便局の再編(統合・廃止)は、全国4696の集配郵便局を1088局に集約”、”現金自動預払機(ATM)の利用頻度が低いところは撤退”、”ホストの回収回数の減少”など、採算を重視した結果、地方などは以前より不便になっている意見が多数でてきています。
民間企業は営利団体です
現在、全国の3分の1の地方自治体が、水道料金でまかないきれず赤字になっています(2018年・厚生労働省より)。それでも地方自治体の運営ですから、赤字を税金などで補填して事業が継続できている状況です。今後、民間企業が運用するようになれば、採算が取れない過疎地などの地域は、サービスや水質が低下する一方で、料金は高くなる地域格差が広がることが考えられます。民間企業は、営利団体なので、当然と言えば当然の結果です。
「水道料金の地域格差が拡大」について、最後に
実は、水道事業に参入する民間企業ですが、主に外国の大手水道事業者だと言われています。僕のイメージでは、経営にドライなイメージがある外国の企業は、採算が合わない事業はやらないと思っています。当初は、全国一律のサービスを提供していても、いずれ儲かるような仕組にするので、過疎地などの地域は、今よりも厳しいことが容易に予想できます。もしかしたら、今後、井戸水が見直され、地方では井戸水が当たり前に使われている時代に戻っているかもしれません。